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AIと特許について(その6)


 前回は、「実施可能要件」に関する例について説明しましたが、今回は「進歩性」についての例について説明いたします。

 下記「癌レベル算出装置」の発明を題材として検討します。この癌レベル算出装置の発明に関する請求項1は、人間が行っている業務の人工知能を用いた単純なシステム化であり、引用発明1及び周知技術との関係で進歩性が否定されました。

【請求項1】
 被験者から採取した血液を用いて、当該被験者が癌である可能性を示すレベルを算出する癌レベル算出装置であって、
 前記被験者の血液を分析して得られるAマーカーの測定値及びBマーカーの測定値が入力されると、前記被験者が癌である可能性を示すレベルを算出する癌レベル算出部を備え、前記癌レベル算出部は、Aマーカーの測定値とBマーカーの測定値が入力された際に、推定される癌レベルを算出するように、教師データを用いた機械学習処理が施された学習済みニューラルネットワークを有する、癌レベル算出装置。

 なお、概念図を下に示します。

【引用発明1】
 被験者から採取した血液を用いて、医師により、当該被験者が癌である可能性を示すレベルを算出する癌レベル算出方法であって、前記被験者の血液を分析して得られたAマーカー及びBマーカーの測定結果を用いて、前記被験者が癌である可能性を示すレベルを算出する癌レベル算出段階を備える、癌レベル算出方法。

【周知技術】
 機械学習の技術分野において、複数の者から収集した各者に関連する所定の入力データ(生体データ等)とその者が病気である可能性を示す出力データからなる教師データを用いてニューラルネットワークに機械学習処理を施し、当該学習済みニューラルネットワークを用いて、被験者に関連する所定の入力データに基づいて当該被験者が病気である可能性を示す出力データの算出処理を行うこと。

[拒絶理由の概要]
 請求項1に係る発明と引用発明1とを対比すると、両者は以下の点で相違する。
(相違点)
 請求項1に係る発明は、「癌レベル算出装置」であって、Aマーカーの測定値とBマーカーの測定値が入力された際に、癌である可能性を示すレベルを算出するように、教師データを用いた学習処理が施された学習済みのニューラルネットワークを用いて癌である可能性を示すレベルを算出するのに対し、引用発明1は、癌レベル算出方法であって、医師がAマーカーとBマーカーの測定結果を用いて癌である可能性を示すレベルを算出している。
(相違点についての検討)
 引用発明1と周知技術とは、ともに病気の可能性の推定を行うためのものであるから、課題が共通する。そして、医療の分野において医師が行っている推定方法を、コンピュータ等を用いて単にシステム化することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。
 以上の事情に基づけば、引用発明1に周知技術を適用して医師が行っていた癌レベルを算出する方法をシステム化し、Aマーカーの測定値とBマーカーの測定値が入力された際に、癌である可能性を示すレベルを算出するように、教師データを用いた学習処理が施された学習済みのニューラルネットワークを用いて癌である可能性を示すレベルを算出する構成とすることは、当業者が容易に想到することができたことである。
 そして、請求項1に係る発明の効果は当業者が予測し得る程度のものであり、引用発明1に周知技術を適用するに当たり、特段の阻害要因は存在しないことから、進歩性を否定する。

特許庁ホームページより


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