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AIと特許について(その5)


 前回は、「実施可能要件」で拒絶される例について説明しましたが、今回は拒絶理由がない例について説明いたします。

 下記「事業計画支援装置」の発明に関する請求項1は、教師データに含まれる複数種類のデータ間の具体的な相関関係等が明細書等に記載されていないものの、出願時の技術常識を鑑みるとそれらの間に相関関係等が存在することが推認でき、実施可能要件を満たしています。

【請求項1】
 特定の商品の在庫量を記憶する手段と、
 前記特定の商品のウェブ上での広告活動データ及び言及データを受け付ける手段と、
 過去に販売された類似商品に関するウェブ上での広告活動データ及び言及データと、前記類似商品の売上数とを教師データとして機械学習された予測モデルを用いて、前記特定の商品の広告活動データ及び言及データから予測される今後の前記特定の商品の売上数をシミュレーションして出力する手段と、
 前記記憶された在庫量及び前記出力された売上数に基づいて、前記特定の商品の今後の生産量を含む生産計画を策定する手段と、前記出力された売上数と、前記策定した生産計画を出力する手段と、
 を備える事業計画支援装置。

[発明の詳細な説明の概要]
 本発明の目的は、特定の商品について、広告活動データとその言及データから、今後の売上数の予測値を推定し、在庫量と売上数の予測値に基づいて今後の生産量を含む生産計画を提示する、事業計画支援装置を提供することにある。これにより、特定の商品の販売者は、商品の生産計画の見直しを早期に行うことができる。
 まず、事業計画支援装置は、特定の商品の在庫量を記憶する。続いて、商品についてのウェブ上での広告活動データ及び言及データを入力として、商品の売上数を出力する予測モデルを用いて、当該商品の予測される売上数を取得する。
 ここで、前記広告活動データとしては、特定の商品についてのウェブ上での広告露出回数を用いる。広告の例としては、バナー広告、リスティング広告、メール広告等が挙げられる。前記言及データの例としては、ウェブ上の記事やSNS、ブログ等での当該商品や広告についての評価が挙げられる。当該商品や広告についての評価として、好意的な評価が多いと高い値、否定的な評価が多いと低い値となる評価値を用いる。当該評価値は、ウェブ上の記事やSNS、ブログ等のテキストに公知のコンピュータ処理を行うことで取得可能である。
 前記予測モデルは、ニューラルネットワークなど公知の機械学習アルゴリズムを利用して、過去に販売された類似商品に関する広告活動データ及び言及データと、該類似商品の実績売上数の関係を教師データとして学習させる教師あり機械学習により生成する。
 その後、記憶した在庫量と予測される売上数を比較し、前記売上数が前記在庫量を上回れば前記商品の生産量を増やす生産計画を、前記売上数が前記在庫量を下回れば当該商品の生産量を減らす生産計画を策定する。
 なお、概念図を下に示します。

[拒絶理由なしの概要]
 発明の詳細な説明には、ウェブ上の広告活動データ及び言及データについて、ウェブ上の広告活動データとしては特定の商品についてのウェブ上での広告露出回数を用いること、言及データとしてはウェブ上の記事やSNS、ブログ等での当該商品や広告についての評価値を用いることがそれぞれ記載されている。
 発明の詳細な説明には、これらウェブ上での広告活動データ及び言及データと売上数との間の具体的な相関関係等については記載されていないが、出願時の技術常識に鑑みてこれらの間に相関関係等が存在することが推認できる。
 また、一般的な機械学習アルゴリズムを用い、相関関係等を有する入力データと出力データを教師データとして機械学習を行うことにより、入力に対して対応する出力を推定する予測モデルを生成可能であることは、出願時において周知である。
 したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る「事業計画支援装置」を作れ、かつ、使用できるように記載されているから、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていることから、実施可能要件が満たされています。

特許庁ホームページより




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