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AIと特許について(その4)


 前回までは、人工知能であるAIの概念について説明してきましたが、今回からAI関連技術と特許審査について説明いたします。
 AI関連技術の審査は、現行の審査基準等に基づいて特段問題なく行えていると考えられていますが、AI関連技術との関連が少なかった出願人等に審査の運用を分かりやすく示すことや、技術分野によらず統一的に特許性の判断を行うことが、特許庁として重要と考えられたことから、具体的な事例が作成されています。
 以下に、一事例を説明します。

 下記糖度推定システムの発明に関する請求項1は、教師データに含まれる複数種類のデータの間に相関関係等が存在することが明細書等に裏付けられておらず、出願時の技術常識を鑑みてもそれらの間に何らかの相関関係等が存在することが推認できないことから、実施可能要件違反とされました。

【請求項1】
 人物の顔画像と、その人物が栽培した野菜の糖度とを記憶する記憶手段と、
 前記記憶手段に記憶された人物の顔画像と前記野菜の糖度とを教師データとして用い、入力を人物の顔画像とし、出力をその人物が野菜を栽培した際の野菜の糖度とする判定モデルを機械学習により生成するモデル生成手段と、
 人物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、
 前記モデル生成手段により生成された判定モデルを用いて、前記受付手段に入力された人物の顔画像から推定されるその人物の栽培した際の野菜の糖度を出力する処理手段と、
 を備える糖度推定システム。

[発明の詳細な説明の概要]
 発明の目的は、人相とその人が育てた野菜の糖度に一定の関係性があることを用いて、人物の顔画像からその人物が野菜を栽培した際の野菜の糖度を推定するシステムを提供することにある。
 まず、糖度推定システムは、ユーザから人物の顔画像の入力を受け付ける。そして、人物の顔画像を入力すると共に、その人物が野菜を栽培した際の野菜の糖度を出力とする判定モデルを用いて、前記人物が野菜を栽培した際の予想される野菜の糖度を取得します。
 前記判定モデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)など公知の機械学習アルゴリズムを利用して、人物の顔画像と、その人物が栽培した野菜の糖度の関係を教師データとして学習させる教師あり機械学習により生成する。
 なお、概念図を下に示します。

[拒絶理由の概要]
 発明の詳細な説明には、人物の顔画像とその人物が野菜を栽培した際の野菜の糖度について、「人相とその人が育てた野菜の糖度に一定の関係性がある」と述べられているにとどまり、人相を特徴付けるものの例として頭の長さ、頭の幅、鼻の幅、唇の幅が記載されているものの、具体的な相関関係等については記載されていない。そして、出願時の技術常識に鑑みてもそれらの間に何らかの相関関係等が存在することが推認できるとはいえない。また、実際に生成された判定モデルの性能評価結果も示されていない。
 したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る「糖度推定システム」を作ることができるように記載されておらず、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められないことから、「実施可能要件違反」とされる。

特許庁ホームページより


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