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著作権裁判例について(その1)

 著作権裁判例の紹介の第一弾として、奈良地裁で令和1年7月11日に出された判決の公衆電話ボックス型金魚箱の著作権侵害差止等請求事件について解説いたします。
1.内容
 この裁判は、公衆電話ボックス様の造作水槽内に金魚を泳がせ、受話器部分から気泡を発生させている電話機が設置された原告作品に関して、被告が著作権を侵害しているかが争われた裁判である。
 主な争点としては、原告作品が著作物性を有するか否か、原告作品が著作物性を有した部分があるとする場合、被告作品がその部分と同一性を有するか否かです。
 さらに、原告作品の著作物性に関し、アイディアなど表現自体ではないものは著作物に該当しないとして、著作物とアイディアの境界線を明らかにしたものでもあります。

2.裁判所の判断
 公衆電話ボックスの内部で金魚を泳がせるという原告の発想自体は斬新で独創的なものであるが、これ自体はアイディアであり、アイディアの実現のためには、水中への空気の注入が必須である。したがって、金魚の生育環境を維持するために、電話機の受話器部分を利用して気泡を出す仕組みに関しては創作性が認めなかった。
 他方、公衆電話ボックス内に設置された電話機の種類・色・配置等の具体的な表現に、作者独自の思想又は感情が表現され、原告作品についての著作物性が認められた。


3.裁判所の判断に対する解説
(1)受話器部分から気泡を出す仕組みについて
 受話器部分を利用して気泡を出すことは、一つの選択肢ではあるものの、公衆電話ボックス様の造作物の他の部分から気泡を出すことも考えられ、また、受話器から気泡を発生させるのが合理的かつ自然な発想であるとしても、受話器をハンガー部分にかけた状態としても良いとも考えられ、裁判所の判断が妥当といえるかは、疑問であった。
(2)電話機の種類・色・配置等の具体的な表現について
 既成の電話機を用いているのであれば、電話機の種類・色・配置等は単なる選択のようにも考えられ、電話機自体には著作物性がないとも思われる。このため、電話機に関しての著作物性の判断には、疑問が残った。

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