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著作権裁判例について(その2)

 前回、公衆電話ボックス型金魚箱の著作権侵害差止等請求事件の奈良地裁判決についての解説をしましたが、この事件の控訴審について今回は解説いたします。

1.内容
 この裁判は、公衆電話ボックス様の造作水槽内に金魚を泳がせ、受話器部分から気泡を発生させている電話機が設置された原告作品に関して、被告が著作権を侵害しているかが争われた裁判です。
 主な争点としては、控訴人の原告作品が著作物性を有するか否か、原告作品が著作物性を有した部分があるとする場合、被控訴人の被告作品がその部分と同一性を有するか否かです。

2.裁判所の判断
(1)原告作品の著作物性について
 原告作品の外観を以下の4つ分けて着目した。
第1 電話ボックスの多くの部分に水が満たされている
第2 電話ボックスの側面の4面とも、全面がアクリルガラス
第3 その水中には赤色の金魚が泳いでおり、50匹〜150匹程度
第4 公衆電話機の受話器がハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され、受話部から気泡が発生
 第1〜第3には、創作性が現れているとはいえないと裁判所は判断している。
 第4の点に関し、人が使用していない公衆電話機の受話器はハンガー部に掛かっているものであり、それが水中に浮いた状態で固定されていること自体、非日常的な情景を表現しているといえるし、受話器の受話部から気泡が発生することも本来あり得ないことであると裁判所は判断している。
 そして、原告作品は、電話を掛け通話をしている状態がイメージされており、鑑賞者に強い印象を与える表現であり、控訴人の個性が発揮されていることから、原告作品の著作物性を認めている。さらに、被告作品はこの点について同一性を維持し、被告作品は原告作品を翻案したものといえるとも判断している。

3.結論
 被控訴人らは、被告作品を制作したことにより、控訴人の著作権を侵害したと認められると裁判所は判断し、被告作品の制作差止請求、被告作品を構成する公衆電話ボックス様の造作水槽及び公衆電話機の廃棄請求及び、損害賠償金55万円を支払えとの判決がされた。


4.裁判所の判断に対する解説
 地裁判決では、受話器部分から気泡を出す仕組みについて著作物性が認められない替わりに、電話機の種類・色・配置等の具体的な表現について著作物性が認められた。
 これに対して、大阪高等裁判所では、上記と異なり「公衆電話機の受話器がハンガー部から外されて水中に浮いた状態で固定され、その受話部から気泡が発生している」点について著作物性が認められた。
 以上より、本判決は、受話器の受話部から気泡が発生している点で被控訴人の著作権侵害が認められたことから、妥当な判決と考えられる。

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